『スクリーン・スタディーズ』刊行しました!

2019年1月30日、光岡寿郎・大久保遼編『スクリーン・スタディーズ―デジタル時代の映像/メディア表現』東京大学出版会 が刊行されました。この中で私は第9章「1970年代のビデオ技術受容とセクシュアリティ」を担当しています。映像の保存・所有を可能にするビデオという技術が家庭に普及していく際、どのようなイメージでこの技術が語られたかを論じました。簡単にいうと「ビデオが一般家庭に普及する際には、アダルトビデオの存在が決定的に大きな役割を果たした」というイメージが、どのように広がっていったかを記述した論文です。
 
自分自身このブログを辿ると、2006年11月、まだ博士課程に上がったばかりの初々しい(?)大学院生だったころに、私はこの論文の元ネタを思いついたようです。その後、学会で発表したり紀要に書いたりはしていたのですが、2019年になってついにその成果が書店に並ぶことになったのでした。まさに構想・執筆12年の超大作になりました(笑)。
 
自分としてはメインの研究というより、修士の大学院生時代に、オーディオやビデオなどのメディア技術受容史を調べたときの副産物として生まれた研究成果でした。だからこそ肩肘張らずに、興味を持った事象を素直に追求することができて、書いていて非常に楽しかった論文でもあります。それを編者のお二人が偶然見つけてくださったことで、このような形で世に出ることになりました。本当にニッチな研究ですが、何でも書いてみるもんだなと思います。
 
本全体は、映像メディア研究の最前線といえるものになっています。テレビや映画の表象分析にとどまらず、スマホ画面やパブリックビューイングなどの公共空間に偏在する「スクリーン」を軸に、映像メディアがどのように経験されてきたか/いるかを論じた全16章の論文集です。自分は鉄道好きなので、第5章「明治期のヴァーチャル・リアリティ」(上田学)は特に一推しです。明治時代の博覧会で上映された(いまでいうところの)VR映像が、当時最先端の乗り物だった鉄道の乗車体験映像だったという時点で大興奮でした。
 
学術書ということで値段も高価(税抜5200円!)ですが、研究者のみなさんはぜひお買い求めを、それ以外の皆さんはぜひ図書館へのリクエストを、何とぞよろしくお願い申し上げます。出版社のWEBサイトはこちら。

http://www.utp.or.jp/book/b378009.html

 

スクリーン・スタディーズ: デジタル時代の映像/メディア経験

スクリーン・スタディーズ: デジタル時代の映像/メディア経験