俺は男と、つぶやきながら。


宮台真司・辻泉・岡井崇之編『「男らしさ」の快楽―ポピュラー文化からみたその実態』が、
去る9月24日、勁草書房より発売されました。


男のおしゃれ、格闘技、ラグビー、ホストクラブ、性風俗、オーディオマニア、
鉄道ファン、ロック音楽などなど、男性が中心的な担い手となってきた文化に
焦点を当て、当事者たちがどのような意識の下でこれらを営んできたのかを、
エスノグラフィックなアプローチで明らかにした意欲的な論文集です。



この本の第8章に、「オーディオマニアと〈ものづくりの快楽〉―男性/技術/
趣味をめぐる経験の諸相」という小論を掲載させていただきました。


これは、日本におけるオーディオ文化を、男性/技術/趣味という三者が交錯する
地点において生成・変容してきた現象として捉え、その歴史を概観した上で、現在の
オーディオマニアたちが経験してきた/している快楽と困難を、インタビュー調査を
元に描き出そうとしたものです。



例によって上手く書けなかった点はいろいろあるけれど、ここに反省の弁を
つらつら書き連ねるのも「男らしくない」気がするので(笑)、ここは素直に
皆さまからのご意見・ご批判を待ちたいと思います。



目次は以下の通りです。


 まえがき


 第1部 「男らしさ」のとらえ方
  第一章 「男らしさ」への三次元アプローチ―楽しい「男らしさ」の社会学
       (辻泉)
  第二章 「男らしさ」はどうとらえられてきたのか―「脱鎧論」を超えて
       (岡井崇之)


 第2部 自己=身体性―男たちの自己鍛錬
  第三章 部族化するおしゃれな男たち―女性的な語彙と「男らしさ」の担保
       (谷本奈穂・西山哲郎)
  第四章 男たちはなぜ闘うのか―格闘技競技者にみる「男らしさ」の現在
       (岡井崇之)


 第3部 集団=関係性―男たちの対人コミュニケーション
  第五章 一人ぼっちでラグビーを―グローバル化ラグビー文化の実践
       (河津孝宏)
  第六章 「男らしさ」の装着―ホストクラブにおけるジェンダー・ディスプレイ
       (木島由晃)
  第七章 「エッチごっこ」に向かう男たち―性風俗利用における「対人感度」
       (多田良子)


 第4部 社会=超越性―男たちのロマン
  第八章 オーディオマニアと〈ものづくりの快楽〉―男性/技術/趣味をめぐる
       経験の諸相 (溝尻真也)
  第九章 なぜ鉄道は「男のロマン」になったのか―「少年の理想主義」の行方
       (辻泉)
  第十章 ロック音楽の超越性と男性性―ピエール・ブルデューの相同性理論を基に
       (南田勝也)


 終章 「自分らしさ」から、とりあえずの「男らしさ」へ―ポピュラー文化から
     みた「男らしさ」の行方 (宮台真司・辻泉)


 あとがき


それにしても、出来上がった本を見て驚いたのは、世の中にはこんなにたくさんの
社会学的フィールドワークがあるんだ…という点。
あらゆる分野にその網の目は張り巡らされていて、それぞれの領域で興味深い
研究成果が生み出され続けている現状を目の当たりにして、改めて刺激を受けると
同時に、この網の目のわずかな綻びを突きながら成果を上げ続けなければならない
自分の置かれた状況に、身の締まる感覚も覚えます。



その中でも個人的に面白かったのは、第六章の木島氏のホストクラブ論。
単純に自分の知らない(そして「下戸の男性」である自分には知りようもない)世界を
丹念にレポートしてくれていて興味深かったのはもちろんのこと、ゴフマンを軸とした
メタ分析と、その上で展開される「男らしさの衣」という概念提示も、説得力がある。


こういう事例と概念を両輪にしながら、相補的に描いていくようなスキルが
自分にはまだまだ足りないんだよな…って、結局反省の弁になってしまう訳ですが。




書店や図書館で目にする機会があれば、ぜひお手にとっていただければ幸いです。
本屋さんにない場合は注文しよう!(笑)


「男らしさ」の快楽―ポピュラー文化からみたその実態

「男らしさ」の快楽―ポピュラー文化からみたその実態