「オーディオマニアの生活史」

一般社団法人現代風俗研究会・東京の会が発行している会誌『現代風俗学研究』に、「オーディオマニアの生活史―〈媒介〉としてのメディア技術をめぐる語り」という論文を寄稿しました。主に3名の世代の異なるオーディオマニアの方への聞き取りから、この方々がメディア技術に対してどのような意味づけを行ってきたのかを記述したものです。


2007年から断続的にオーディオマニアサークルでのフィールドワークを続けてきたものの、2009年に刊行された『「男らしさ」の快楽』(宮台真司他編,勁草書房)で論文を書いて以降アウトプットを出すことができず、もどかしい思いをしていました。それだけに、今回の機会は本当に嬉しいものがあります。これまでにもいわゆるメディア史の論文はいくつも書いてきたのですが、その問題意識は踏襲しつつも、今回は「生活史の中のメディア」という、これまでとは少し異なる記述方法を採用してみました。ぜひ忌憚のないご意見をいただければ幸いです。


冊子自体はなかなか手に入りづらいものではあるのですが、現代風俗研究会のwebサイトから注文・購入することが可能なので、オーディオが大好きな方、メディア研究が大好きな方、ぜひご覧くださいませ。


ちなみに今回の特集は「音楽の風俗」で、執筆者に細川修平さん、小泉恭子さん、青木深さん、稲増龍夫さんと、超豪華メンバー勢揃いのお買い得号になっています。『レコードマップ』編集者の針谷さんの論考や、高橋聡太さん・日高良祐さんといった若手ホープの論文も読みごたえがあって、超おすすめです!

                                                                    • -

『現代風俗学研究』第16号 (一般社団法人 現代風俗研究会東京の会,2015年)

特集「音楽の風俗」
・戦前日本のルンバ略史(細川周平
・「あの頃」を連れてくる音楽(小泉恭子)
・複数日本と複数のアメリカ―JR中央線沿線にみる米軍将兵と音楽(青木深)
・アイドル学・序説(稲増龍夫
・オーディオマニアの生活史―〈媒介〉としてのメディア技術をめぐる語り(溝尻真也)
・レコードコレクションという欲望―『レコードマップ』28年の編集経験から(針谷順子)
・来日公演のライブ文化史―1950年代初頭のジャズ・ブームにみる「熱狂」の原風景(高橋聡太)
・オフラインで流通する音楽ファイル―パソコンユーザーによる同人イベントの利用(日高良祐)
・日本のソーシャルメディアにおける派生文化―ニコニコ動画の歌い手を実例に
(ルジラット・ヴィニットポン)

投稿論文
大宅壮一の戦中と戦後―ジャワ派遣軍宣伝班から「亡命知識人論」「「無思想人」宣言」へ
(阪本博志)
・オタク化するお台場―文化装置の集積に注目して(菊池映輝)

赤い夕陽が 校舎をそめて

来たる11月23日(月祝)、大田区東京流通センターで開催される第二十一回文学フリマに、溝尻ゼミが出展します。

今年制作した雑誌は、名前もそのまま『大学三年生』
「平成生まれの大学生が、昭和について真面目に調べてみた」をコンセプトに、10名のゼミ生がそれぞれの切り口でフィールドワークを行ってきました。

戦時中の暮らしを経験者にインタビューしたり、戦時中の新聞広告をひたすら追った硬派なものから、金八先生全シリーズをひたすら見続けたり、ジャニーズ所属アイドルユニットデビュー時の雑誌『明星』をひたすら探した軟派なものまで、とにかく昭和についてひたすら追いかけた3か月間の記録が詰まっています。

さらには、昭和初期から続く横浜のジャズ喫茶「ちぐさ」をはじめ、古くから愛されている喫茶店を取材した特典映像DVD付きで、出血覚悟の定価100円!

一昨年の文学フリマ出展時は終了時間を待たずに完売したので、今回は少し強気の部数を刷りました。ただ、刷れば刷るほど赤字なので、売れても地獄、売れなきゃさらに地獄の背水の陣で臨んでおります。今後のゼミ活動の命運を左右するこの一冊。ぜひみなさまのお買い上げをお待ちしています!

                                • -

溝尻ゼミ・昭和探索プロジェクト 『大学三年生』

第二十一回文学フリマ
11月23日(月祝) 11:00-17:00
東京流通センター(東京モノレール「流通センター」駅すぐ)
2階Fホール カ-19,20ブース

                                • -

『大学生のためのメディアリテラシー・トレーニング』刊行!

去る9月10日、長谷川一・村田真理子編著『大学生のためのメディアリテラシー・トレーニング』が三省堂より刊行されました。
https://www.sanseido-publ.co.jp/publ/medialitcytrn.html#bookcontents

私はこの中で「初音ミクとN次創作」という短いコラムを書いています。
どこまで遡ってもオリジナルが存在しない「初音ミクの曲」という楽曲群を、私たちはいったい「誰の曲」として捉えればいいのかという、音楽学社会学で交わされてきた議論について整理した文章です。


そんなコラムはともかくこの本、タイトルに「メディアリテラシー」とある通り、テレビ、ケータイ、ネット、ラジオ、雑誌といった王道のメディアについてももちろん採り上げてはいるのですが、一方で、コンビニやディズニーランドといった一見「メディア」とは思えないようなものまで掘り下げています。読者のみなさんには、ぜひ、なぜこれらがメディアなのか、どういう意味でメディアといえるのか、という点から考えてほしいと思っています。

メディアリテラシーとは単に「メディアの危険性」を学ぶことではなく、メディアについて考えることを通してより広い「社会のありよう」を考えることであるというコンセプトは、非常に重要なものだと考えています。私たちが生きている社会に対する多面的な見方は、まさしく大学で学ぶ上での基礎体力となるものだからです(だから「トレーニング」なんだと思う)。

いろいろな角度から社会を見ることができるようになるのは、要するに「視野が広がる」わけで、本当におもしろいことです(この本の帯にも「社会の本当のおもしろさがわかる」と書いています)。もちろん、視野が広がれば社会のイヤな部分や問題点もたくさん見えてくるのですが、そこからスタートして自分の知識や思考を深めていく作業も含めて、自分はやはりおもしろい営みであると思っているし、この本を通して、ぜひ学生のみなさんにもそのおもしろさを感じてほしいと思っています。

テキスト&トレーニングシートの2分冊という斬新な構成で、いまならなんとセットでズバリ2100円!(税抜) 本屋さんになければ注文しよう!


大学生のための メディアリテラシートレーニング

大学生のための メディアリテラシートレーニング

まわる まわるよ 世代はまわる

来たる7月25日(日)、文京映画交流クラブ+小石川ウーマンベースさん主催の三世代デジタルストーリーテリング・ワークショップ「わたしのまちの、いま・むかし」に、溝尻ゼミの3年生が学生ファシリテーターとして参加します。


デジタルストーリーテリングとは、写真にナレーションを加えた短い映像作品で、自分自身の物語をつくる表現活動で、溝尻ゼミとしては、2012年に秋葉原で行った「メディアコンテ秋葉原」(愛知淑徳大学メディアプロデュース学部3年ゼミ)、2013年に東京都中央区で実施した生涯教育講座「区民メディアリポーターになろう!」(目白大学社会学部メディア表現学科3年ゼミ)に続き三度目の参加となります。


今回は東京都文京区に住むシニアの方々と同区の小学生を対象に、シニア+小学生でチームを組みながら、自分たちが住む地域の現在と過去を語る短い写真物語(現代の小学生が昔の文京区にタイムスリップしてしまうお話)を作ってもらいます。シニア対象や小学生を対象にしたワークショップはこれまでにも経験したことがあるのですが、両者が同じチームに入って対話・制作を行う活動は、実は私も初めてだったりするので、どうなることやら。


ちなみに学生たちは、自身が作品制作をするのではなく、参加者のみなさんが映像を作るためのサポートをするファシリテーターという役割を担います。
ただ、単にお手伝いをするというよりは、制作チームの中に入り込んで対話を重ね、ときには議論すらしながら一緒に作り上げていくので、共同制作者といった方が正しいかも知れません。こちらもこちらでどうなることやら(ちなみに学生たちは現在、鋭意リハーサル中です)。


詳しい情報は文京映画クラブのfacebookページ https://www.facebook.com/bunkyoeiga をご覧くださいませ。

                              • -

なお目白大学3年ゼミでは、同時並行で夏休み企画も始動中です。昨年は成果を秋の同人誌即売会(COMITIA110)で頒布しましたが、今年も何らかの形で成果を公開したいと思っています。震えてお待ちください!

Livetime Respect.

ずっと年末恒例にしてきた1年間のライブふり返りですが、仕事の関係で12月〜1月がが死ぬほど忙しくなってしまい、ゆっくり振り返る時間を取れなくなってしまったので、今回は年度末にふり返ることにした(いや、年度末&年度始めも死ぬほど忙しいんだが、年末年始に較べればまだマシだったので)。


一応毎年、年間20回というライブ参戦目標を立ててはいるのだけれど、回数を増やすためにライブに行くようになっては本末転倒なので、ライブに行った回数は年の途中では絶対に数えずに、1年が終わったところでまとめて確認するようにしています。
さて、2014年度の結果はいかに?


 日程アーティスト会場
14月15日在日ファンクSHIBUYA AX
24月29日APOGEE渋谷CLUB QUATTRO
35月25日くるり, キュウソネコカミ, 赤い公園SHIBUYA AX
46月29日フジファブリック,SalyuZEPP DiverCity
57月12日the telephonesEX THEATER ROPPONGI
67月23日キュウソネコカミ赤坂BRITZ
78月20日レキシ日本武道館
88月24日tobacco juice新代田FEVER
99月23日HINTO渋谷CLUB QUATTRO
1010月15日andymori日本武道館
1110月18日APOGEE青山 月見ル君想フ
1211月16日在日ファンクEX THEATER ROPPONGI
1311月28日フジファブリック日本武道館
1412月23日the telephonesEX THEATER ROPPONGI
152月14日キュウソネコカミ豊洲PIT
163月8日HINTO新代田FEVER
173月14日渋谷CLUB QUATTRO


結局、2014年度のライブ参戦は17回と、目標にあと一歩およびませんでした。20回の壁は高い!
それにしてもこうやって見ると、渋谷CLUB QUATTRO(キャパ800人)、EX THEATER ROPPONGI(キャパ1700人)と同じ、3回も日本武道館(キャパ8000〜10000人!)に通ったのは、自分としては珍しい。


andymoriはこの武道館ライブをもって解散。彼らが愛してやまない音楽を、もっともっと聴きたかったよ・・・。何年もライブ通いを続けてきて、解散ライブにも何度も立ち合ってきたけれど、やっぱりこればかりはどうしても慣れない。
まあ、ライブもできないまま好きなミュージシャンが亡くなってしまう経験も1度ではないので、それに較べれば最後にありがとうを言える機会があるだけでもありがたい、とも思うんだが・・・でもやっぱり悲しい。


解散といえば、デビュー以来ずっと追いかけてきたthe telephonesが、2015年いっぱいでの活動休止を発表したのも、悲しい出来事。自分はちょうどその発表の場になったライブに居合わせたけれど、場が凍るってのはこういうことなんだと思った。いつもはみんなハイテンションで踊りまくっているライブ会場が、まるでお葬式のような空気になっていた。


でも、悲しい出来事を乗り越えて、活動してくれるバンドもいる。
インディーズデビューからずっと追いかけてきたフジファブリックが、10年以上の歳月をかけてついに武道館のステージに立ったのを見たときは、もう自分のことのように嬉しかった。そして道半ばで逝ったボーカル・志村君の声が武道館に響いたときは、本当に涙が止まらなかった・・・。自分にとっては、生涯忘れないであろうライブ経験のひとつ。


2015年は、これまたずっと追いかけてきたけど2012年に活動休止してしまったバンド、東京60WATTSが活動を再開してくれるとのこと。同世代のミュージシャンが元気に歌っているのを見るのは嬉しいし楽しい。自分も体力の続く限り、ライブハウスで歌って踊って飛び跳ねたい。翌日(と翌々日)の筋肉痛に耐えながら。

俺らが作った雑誌を売って

今年度は目白大学に加えて、武蔵大学社会学部メディア社会学科でも3年ゼミを担当しています。
『ロックミュージックの社会学』でおなじみ、南田勝也ゼミのピンチヒッターということで、集まったゼミ生も筋金入りの音楽ファン。ということで、今年度はゼミのテーマを「音楽から見えてくる社会」に設定しました。単に好きな音楽の魅力やヒットの秘密を語るのではなく(それは研究ではない)、音楽やその周りの現象について、なぜ、いかにしてそれが起こったのかを調べ上げ、それが起こった社会とはいかなる社会なのかについて考えぬく、というプロジェクトです。


学生たちは難解な社会学文献に悪戦苦闘しながらも、自分自身で問いを立て、調べ上げ、その意味について思考と議論を重ねてきました。そしてその成果を、ゼミ論文にまとめ上げてきました。テーマの一例を紹介すると…

MAN WITH A MISSIONなど覆面バンドが顔を隠す意味―逸脱と「ズレ」をめぐる一考察
・矢沢栄吉ライブでのタオル投げはいかにして広がったか―群衆論とノリの社会学の観点から
・歌詞に表象される「東京」像―制作者の出身地を軸とした比較分析
・アイドルファンのライフヒストリー―彼らはいつ、いかにしてファンになったのか
・手紙はいかに歌われてきたか―コミュニケーションツールの変化をめぐる歌詞分析
・ジャニーズファンにとっての楽曲の位置づけ―彼女らは何を聴いているのか
・アイドルの処女性信仰をめぐる社会学―ファンへのインタビュー調査を通して
・音楽好きにとってカラオケとはいかなる場か―その楽しさと苦しさをめぐるフィールドワーク


この他にもたくさんの興味深い研究成果が生まれました。そして、こんな面白い成果を自分たちのものだけにしておくのはもったいない!ということで、これらを一冊にまとめた論文集を、今月末に開催される同人誌即売会で頒布します。


題して『音楽と社会学と人』

120ページ超の充実度で、売れなくなったらはい終了、売切御免・流血覚悟の1冊100円!

COITIA110 (11月23日 東京ビッグサイト 東5ホール ち13a)にて頒布予定です。


これを読めば音楽社会学の最先端が分かる(かも知れない)1冊。音楽ファンの学生さんはもちろん、卒論指導中の先生方にもおすすめ(かも知れない)。
秋の行楽日和、連休中日は100円玉持って東京ビッグサイトへGO!

サボテン持ってレコード持って

直前の告知になってしまいましたが、明日土曜日、現代風俗研究会の東京の会で発表します。オーディオ趣味の歴史を簡単に振り返った上で、ある意味「オワコン」になりつつあるこの趣味を全力で楽しみ続けている人びとの活動を紹介し、メディア遊びの過去・現在・未来について考えてみたいと思っています。

会場はみなとみらいも中華街も近いので、横浜散歩のついでにでもぜひお立ち寄りください!
http://www.genpoo.org/topics02/topics.cgi?page=36

                                                                                              • -

新風俗学教室(第17期第5回)
2014年9月6日(土曜日)午後2時〜5時

「オーディオ趣味のエスノグラフィー ―音楽と機械をめぐるコミュニケーション空間の現在」

報告者:溝尻真也(目白大学)
司会:加藤裕康
コーディネイター:神野由紀

蓄音機からiPodに至るまで、オーディオ機器は音楽聴取のために欠かせないツールである。しかし一方で、オーディオは常にそれ自体が趣味の対象でもあった。音楽を聴くためにオーディオを利用するのではなく、オーディオという機械技術そのものと戯れる趣味の有様は、日本に蓄音機がやってきた頃から存在している、きわめて古い趣味の一形態である。オーディオ趣味は、ラジオ聴取やアマチュア無線といった趣味との連続性も保持しながら、1970年代を中心に大きな盛り上がりを見せた。

1980年代以降、機械技術を愛好する趣味はその主軸をコンピュータへと移していくことになる。しかし現在でも、単なる懐古趣味にはとどまらない形でオーディオ趣味を楽しむ人びとは存在しており、webを介したネットワークを形成しながら活発な活動を展開している。デジタル技術が一般化し、手のひらサイズの機器に数千曲もの楽曲を保存して高音質な音楽を楽しむことができるようになった現在、敢えて大型のオーディオ機器と戯れる彼らは、オーディオや音楽をいかなるものとして捉えているのだろうか。

本報告では、複数のオーディオサークルでの参与観察を事例に、主に団塊世代の男性技術者たちを中心とするサークル参加者が、現在どのような形で音楽や機械技術と接しているか述べる。そして、現代社会におけるこうしたオーディオ趣味の有様はいったい何を含意しているのか、フロアを交えて議論を行いたい。


【会場】関東学院大学 関内メディアセンター(8階)M−805号室
※当日はビルの正面入り口が閉まっています。夜間通用口をご利用ください。
http://univ.kanto-gakuin.ac.jp/modules/media7/

【最寄り駅】
みなとみらい線日本大通り駅1番出口より徒歩5分
みなとみらい線馬車道駅5番出口より徒歩5分
JR関内駅北口より徒歩5分
地下鉄関内駅1番出口より徒歩5分

【参加費】
 教室では、毎回、会場費として100円を集めています。ご協力をお願いいたします。事前に参加申請する必要はありません。直接、会場へお越し下さい。